NutZはリーダーのくせに、重要な決断を他のメンバーに委ねる悪い癖があります。
 また、Allwayはリーダーの補佐役の参謀総長のくせに、NutZから出された選択肢の中で、
反射的に無謀なほうを選択する悪い癖があります。

 ある年のお盆休みに、我々は青森県の恐山を目指して東北方面へツーリングに行きました。
 大体の目安で4〜5泊くらいを予定していたのですが、2日目のお昼の時点で、我々はまだ
栃木県と福島県の県境付近にいました。我々はそば屋でそばを食べながら、「行くのか
行かないのか」「行けるのか行けないのか」
を話しているうちに、その判断はAllwayに任せる
ということになりました。
 NutZからの指示では、「この先1Kmも走ればT字の交差点があるから、そこを右に行けば
東北方面、左に行けば北陸方面だから、そこでどちらに曲がるかをもって判断の回答とせよ」
とのことでした。
 Allwayの中では「任せる」と言われた瞬間に「恐山へ行く」と決定していたので、迷わず右へ
曲がりました。NutZもそうなることは分かっていたに違いない、とAllwayは振り返ってNutZを
見たら、NutZはマジかよ!?って感じでズッこけていました。

 その後我々は、猪苗代湖を観て、五色沼でボートに乗って、白布温泉で1泊しました。
 白布温泉では白布屋という民宿に泊まったのですが、ここのご主人がすごいマラソンランナー
で、大広間の壁中に、世界のいたる所でレースに参加した時の写真が飾ってありました。
 我々は感服し、ご主人の話をいろいろ聞きたかったのですが、ご主人は女将さんから馬車ウマの
ように働かされていた
のでゆっくり話はできませんでした。これまでにレースで走った距離
よりも、民宿内を女将さんの命令で走らされている距離のほうが長大であることは明白でした。
 風呂は隣の旅館のオリンピック風呂に入りました。とてもいい湯でした。

 そんな感じでこれぞ休日!っていう時間が流れていったのですが、寝る前にAllwayはNutZから
一つの質問を受けました。

「ホンマに恐山まで行くのん?」

 Allwayはちょっとした物語をでっちあげて、その物語の結末として、「だから俺は、病気で
入院している少年を勇気付ける為にも、必ず恐山へ行く。そう約束した!」
と答えました。
 もちろんそんな事実はありません。遅刻した奴が「来る途中でおばあちゃんを助けていた」
っていうのと同じで、無責任極まりない発言でしたが、ルーティング担当のNutZは一言
「分かった」とだけ言って地図を見ていました。

 翌日、小雨がパラついていましたが、選挙前の西川きよしばりに「晴れろ!」と叫んだら
晴れてきました。
 我々は東北自動車道に乗り、一気に八戸まで行きました。様々な観光名所をスルーする
ことになりましたが、時間的にそうするしかなかったのです。

 八戸まで来たら食べておきたいのがいちご煮ですが、我々は果物のイチゴが入っていると
真剣に思い、食べませんでした。そのせいかそれは関係ないのか、NutZは少しテンションが
下がっていました。

 さて、八戸市から恐山のあるむつ市まではまだ100Km以上あります。時刻は16時でした。
 ここでの「進む」か「泊まる」かの判断もAllwayに任されましたので、進むことになりました。
 50Kmくらい走ってプクイチ(一服)している時に、AllwayがNutZのテンションが普段より
低いことに気付き、「どないしたん?」的なことを聞くと、衝撃の一言が返って来ました!

「なんかさ、罰ゲームみたいやな・・!?」

 観光名所にも寄らず、3時間以上も高速を走って、さらに夕方から100km以上距離をかせぐ為
だけに走るなんて、こんなのツーリングじゃない!と言うのです。
 NutZの意見は正論でしたが、さすがにAllwayも「だったら任せるなんて言うな!」と口論に
なりました!
 我々は走行中は無線機で会話するのですが、この後むつ市に着くまで約1時間、無線機の電波が
我々の会話を乗せて飛ぶことはありませんでした。とてもシュールな感じでした。


   

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